痣 井岡瞬 ネタバレと感想

痣 (徳間文庫)
著者:井岡瞬
発行者:平野健一
2018年11月15日初版
ジャンル:ミステリー

あらすじ
奥多摩で発見された全裸の女性の死体には、1年前に刺殺された真壁刑事の新婚女房朝美の胸に以前よりあった柳の形をしたような痣(あざ)と同じ形の切り口がありました。朝美を襲ったと見られる近所の男は以前捜査の途中で車にはねられて死亡し、真壁はそれより腑抜けになり刑事を辞めようとしてましたが、以前の上司久須部警部の引き留め行為と、この事件に惹きつけられるものがあり、残りの日数を最後の捜査に捧げました。次々に見つかる全裸の女性の死体にはやはり同じ傷跡がありました。朝美の刺殺事件の少し前、伊丹敏和巡査部長が勤務中に失踪しました。今の真壁の上司である伊丹敏和の父である奥多摩分署の伊丹吉範は、息子の失踪の真相が知りたく一人で極秘に捜査していました。どうやらこれらの事件は繋がるようで、吉範は核心に近づき犯人のアジトと思われる建物に乗り込みます。その後少し遅れて真壁と相棒の宮下刑事で駆け付けます。そこで見たものは何なのか、一気にストーリーが展開します。

ネタばれと感想
最初に朝美の胸に以前よりあった痣の形と、被害者の胸に刻まれた形が同じものだったということに読者は興味がそそられます。登場人物も個性的で作中に出てくる人間関係も少し複雑です。犯人はかなり意外で、私は最後に名前が出てくるまで分かりませんでした。犯人はとてつもないサイコスパで身内の中にいます。個人的に一番受けたのが犯人が真壁に言ったセリフです。「心のどこかでこの事件をあんたに捧げるつもりだった。思いっきり派手な事件にしてでくのぼうみたいになっている真壁さんに、昔に戻って欲しかった。ー あんたの活躍を見てみたかったんだ」というところです。たったそれだけのためにこれだけ殺したのかと思うと、いくら作り物とは言え動機がくだらなくて少し呆れて笑えてきました。この小説に限らず犯人の動機というのは案外くだらないものが多いです。しかし面白い作品で、井岡瞬の別のミステリーも読んでみたいと思いました。残念なところは死体はスタンガンで気絶させて絞殺して冷凍しただけで、これといったマニアをくすぶるトリックが無いところです。またサイコスパというのはそういうものなのかもしれませんが、人物像がいまいち掴みにくく、考え方や行動が不自然に映り理解し難いところです。

私の評価
ストーリー 5
描写 3
登場人物の個性 5
意外性 5
トリック 無

Amazon
楽天市場
Yahooショッピング