海外にはチップをやるという習慣がある国があります。20年も前友人とタイを旅行した際、朝ホテルの枕元にチップを置いていきました。観光が終わって帰ってみると新しいバスローブが用意されていました。一方チップを置いていかなかった友人はそのままでした。「チップを置いていかなかったからかな。」と首をかしげていました。
昨日床屋に行った際、髪を切ってくれているマスターが、以前娘の結婚式でハワイへ行った時のことを話してくれました。当日親族共にバスに乗って式場へ向かう際に、運転手はチップをほのめかしたそうです。中々出発しようとしないので、マスターが娘に電話をしました。娘は全て込みで支払っているので、渡す必要はないと言ったそうです。そのままにすると運転手は渋々出発したようです。帰りの際もその運転手で、式場でも待機していたそうですが、一日中ぶすっとして一言も言葉を交わさなかったようです。マスターはその態度に笑っていました。
私はこの話を聞いて、自分ならいくらかのチップを握らせただろうなっと思いました。日本にチップという習慣は無く、娘さんの言ったことは正しいですが、それはあくまで日本での常識で、海外では郷に入っては郷に従った方が事はスムーズに運ぶと思います。下級労働者は意外にチップを大きな収入源にしている場合があります。これは憶測ですが、その運転手は実労分しか賃金が貰えていなく、待機の時間は計算に入っていなかったのではないかと思いました。それなら相当安い事になり、拘束時間に対して割に合わないのは明らかです。チップを渡さなかったくらいで一日中ぶすっとするのですから、当たらずとも遠からずだと思います。
そもそも頻繁にここに来るものでもなく、いつもチップを請求されるものでもありません。いくらかのチップを渡し、一日とは言えその運転手と円満な関係を築けるのなら、私はそうしたと思います。日本なら笑い話になる所ですが、海外なら事情は違います。おかしかったのはその運転手ではなく、文化の違いと事情をよく理解していなかった、バスに乗ったマスターをはじめとする親族一同だと思いました。